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2021.11.30

2年ぶりの全国学力テスト
=コロナ休校の影響をみる=

教育ジャーナリスト 野原 明

小学6年生と中学3年生を対象とする全国学力・学習状況調査(通称:全国学力テスト)が、今年5月に2年ぶりに行われ、その結果が9月に発表された。コロナ禍で昨年はテストが見送られたが、今回は例年よりひと月遅れで行われ、結果も1ヵ月遅れて発表されたものだ。
それによると、小学校の国語と算数の成績は前回よりやや上昇しており、中学校の国語と数学は前回よりやや下降しているが、文部科学省は「ほぼ前回並みの水準で、コロナ休校の影響は見られない」とコメントしている。昨年は休校が3ヵ月を越えた地域もあったが、テストの平均点に差がなかったのは、夏休みの短縮や土曜授業などで全体として遅れを取り戻した、という見方をしているようだ。 参考までに平均正答率を見てみると、小学校の国語は全国の国公私立の平均が64.9%(前回比+0.9ポイント)、算数が70.3%(+3.6ポイント)、中学校の国語は64.9%(‒8.3ポイント)、数学が57.5%(‒2.8ポイント)だった。 テストの結果から見られる傾向としては、複数の文章や資料から必要な情報を見つけ出す力や、日常の事柄をグラフや表を用いて数学的に解釈する力に課題があることが浮かんでいる。 学力調査と同時に、児童生徒に加えて学校を対象に行われた学習状況調査では、いつもの質問項目に加えて「新型コロナウイルス感染症の影響による学校臨時休業と児童生徒の学習状況・学校の取り組み」についての調査が行われた。 それによると、「臨時休業期間中、勉強について不安を感じたか」との質問に、「当てはまる」と「どちらかといえば当てはまる」と答えた小学生は55.0%、中学生は62.5%に上っている。不安を感じた児童生徒はテストの正答率が低い傾向にあり、休業中の学習環境が関係している可能性が高いと文部科学省は分析している。 小学校に対して「臨時休業中に家庭学習としてどのようなものを課していましたか」と尋ねたのには、「教科書に基づく学習内容の指示」が83.3%、「学校が作成したプリント等を配布」が88.4%で、「教育委員会作成の問題集等の教材を活用した学習」「学校作成の学習動画等を活用した学習」「同時双方向型オンライン指導を通じた学習」を大きく引き離していた。これは、中学校においても同様の傾向が見られるようだ。 また、児童生徒に「臨時休業期間中、学校からの課題で分からないことがあったとき、どのようにしていましたか」を尋ねたのに対して、小学生は「家族に聞いた」が78.7%、「自分で調べた」が62.4%、「友達に聞いた」が31.9%だった。中学生では「自分で調べた」が61.5%、「家族に聞いた」が44.1%、「友達に聞いた」が43.9%で、小中学校とも「先生に聞いた」は1割に満たなかった。 コロナ感染症に関するもののほか、毎年質問している項目で経年変化を示すものとして、「将来の夢や目標を持っている」が「当てはまる」と答えた小学生は60.2%で、3年前に比べて約10ポイント減少し、中学生は40.5%で、3年前より約5ポイント少なくなっている。 「学校に行くのは楽しいと思う」かどうかを尋ねたのに対しては、そう思う小学生が48.0%で4年前より7.5ポイント減少し、中学生では43.4% で4年前より4.1%ポイント減っている。これらの結果からみて、学校の臨時休業が子どもの心にマイナスの影響を与えている事は明白である。 コロナ禍が収まらず、これからも学級閉鎖や休校が続くことが予想されるなかで、学校と子ども、子ども同士のつながりを保ち、学習意欲や学習機会を維持・確保することが重要である 学力・学習状況調査は、学習状況に関する実態を把握するだけが目的ではない。データを基に学校教育や家庭教育において子どもの学習の機会を保証し、指導の効率をあげるための方策を検討することが教育行政に求められており、国や地方公共団体の関係者はさらなる努力が必要であることを忘れてはなるまい。

野原 明 ノハラ アキラ

1958年京都大学卒。記者として放送界に入り、83年NHK解説委員(教育・文化等を担当)、93年定年退職。2001年まで部外解説委員。93年文化女子大学教授、2000年同大学付属杉並中高校長兼務。11年退職して文化学園大学名誉教授、同大杉並中高校名誉校長に。
現在はフリーの教育ジャーナリスト。マスコミと学校現場を経験した教育評論が特色。

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