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2021.08.30

第1 志望校を6 年生の夏に定めるべき?

スタジオキャンパス 矢野耕平

はじめまして。中学受験指導スタジオキャンパス代表の矢野耕平と申します。今回よりこちらでコラムを執筆いたします。どうぞよろしくお願いいたします。 さて、中学受験生保護者の皆さんの中にはこの『SCHOOL』を手に取りながら、わが子の受験候補校をどうしようか悩まれている方がいらっしゃるかもしれません。保護者からこの時期によく尋ねられるのは、「志望校の対策にじっくり時間をかけて取り組むには、第1志望校はいつまでに決めなければならないのか?」という点です。そのような質問に対し、わたしは「理想は6年生の夏ですが、9月以降に決めても問題はありませんよ」と回答するようにしています。 6年生が中学受験勉強に最も専心でき、なおかつ、学習量が最も求められるタイミングは紛れもなく夏期講習会です。わが子が明確な第1志望校を心の内に掲げられれば、それがこの夏に精励恪勤する推力になります。「理想は夏」とわたしが申し上げたのはこういう理由です。 一方、親子ともに第1志望校がまだ定まっていない、どうしようか……と焦る必要はありません。大半の中学受験塾は6年生の夏前に「中学受験で出題される範囲」をやっと網羅するのです。学習した内容定着はまだまだ甘いのが普通です。ですから、この夏期講習会はたっぷり時間をかけて、これまでの総復習をおこない定着を深めるためにあるのです。換言すれば、夏は志望校の過去問演習を始めるにはまだ早いのですね。単元の定着が不十分、時間配分も意識できない……そんな状態で過去問に挑んでも思うように得点できるわけもなく、その結果に親子ともに意気消沈してしまうのが関の山です。 さて、第1志望校を選定する際の決め手は何でしょうか?最新の大学合格実績?偏差値ランク?学校名の持つブランド力?すべてちがいます。 よく考えてみてください。わが子が6年間も通う学び舎になるのです。そこで出会う同級生たちは生涯の友になるでしょうし、中高教育で育まれた学力やその姿勢はその後人生を歩む上での「源泉」となります。このような観点で申し上げると、「中高6年間通じてどのような人間形成を目指す学校なのか?」「在校生たちに一脈通じている雰囲気はどのようなものか?」ざっくりとではありますが、この2点を重要視し、第1志望校のみならず受験候補校を選定すべきだとわたしは考えます。この『SCHOOL』もその参考材料になることでしょう。この夏、親子で志望校についてあれこれと話し合う時間を設けましょう。すてきな第1志望校が見つけられるとよいですね。 また、例年のように6年生の保護者から「第1志望校の入試問題、ウチの子と相性が合わないので、受験を回避すべきか悩んでいる」といった相談が持ち込まれます。しかし、上述したポイントを踏まえた結果、親子で第1志望校を定めたのなら、入試問題の相性など些末な問題です。入試問題傾向の違いはあるとはいえ、算数は算数、国語は国語、理科は理科、社会は社会です。何か特別な分野を課されるわけではないのですね。そして、入試本番に間に合うよう、第1志望校の入試問題と「相性が合う」ような「体質改善」に努めればよいのです。そのためには、秋から過去問演習やその直しを日々こつこつと取り組んでいくほかありません。 皆様のお子さんの中学受験が満足いくものになることを心より願っています。

矢野耕平

中学受験専門塾「スタジオキャンパス」代表。東京・自由が丘と三田に校舎を構える。国語・社会担当。著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(ともに文春新書)、『旧名門校 VS 新名門校』(SB新書)など10冊。最新刊は『令和の中学受験保護者のための参考書』(講談社+α新書)。現在、AERA dot. やプレジデントOnlineなどで連載記事を執筆している。

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