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2021.10.30

受験生が挑む「秋の模擬試験」の留意点

スタジオキャンパス 矢野耕平

夏休みが終わりました。お子さんは夏期講習会の学習に連日励んでいたのではないでしょうか。これから中学入試直前期まで、お子さんは毎月のように模擬試験を受験することでしょう。「模擬試験」というと、各科目や4教科総合の偏差値や順位、志望校の合格判定ばかりが気になってしまうものです。しかし、それだけでは模擬試験を受験した意味が半減してしまいます。全国から大勢の受験生を集める規模の大きな模擬試験の場合、科目ごとに複数人の作問者がいて、長い時間をかけて問題を作成します。つまり、模擬試験は「良問揃い」である場合が多いのですね。大半の模擬試験は受験当日に解答解説を配布するでしょう。それならば、その日のうちに「どこで間違えてしまったのか」「間違えたのはどんな過程を踏んでしまったからなのか」をお子さんに都度じっくり考えさせる習慣を付けたいものです。そんな地道な作業の積み重ねこそ、合格への「近道」になるのだとわたしは確信しています。さて、わが子の成績の浮沈に気が気でない保護者は、毎度の模擬試験の成績結果を見て、一喜一憂してしまいがちです。お気持ちは分かります。しかしながら、模擬試験結果を尺度に志望校を選定する際に保護者に求められるのは「冷静な視点」です。たとえば、お子さんの模擬試験の4科偏差値が9月・偏56→10月・偏48→11月・偏61と推移しているとしましょう。このデータを目にした保護者は、「9月から10月にかけて学力は落ちたが、11月に一気に伸びた」という見方をするかもしれません。ちょっと待ってください。そもそも「学力」なるものはそんなに流動的な性質を持つものではありません。各月の成績結果はあくまでもその瞬間の「風速」としてとらえるべきです。この例の場合、3か月平均偏差値、つまり4科偏差値55がわが子の受験パターンを構築する上での「基準値」になるのだと考えましょう。昨今の首都圏中学入試は激戦が繰り広げられていて、第1志望校に合格できるのは、3~4人に1人などと言われています。しかし、保護者がわが子の「基準値」をもとに受験パターンを冷静に構築すれば、「全敗」することなど滅多にないでしょう。模擬試験の数値に基づいて志望校を選定する際、次の目安で「挑戦校」「実力相応校」「安全校」に分類してほしいと、私は常に説明しています(平均偏差値/合格率80%ラインの表を活用)。

たとえば、都内受験生の場合、2月1日午前入試もしくは2月2日午前入試どちらかに「安全校」を受験して、早期のうちに合格を確保しておくことが肝要です。午後入試や2月3日以降は定員の少ない、年によっては倍率変動の激しい入試になることが多く、合否を読むのが難しくなることがあるからです。そして何よりも、「合格切符」を1枚手にすることで、安心感と自信を胸に2月4日、5日まで続く中学入試本番を親子で闘い抜くことができるのではないでしょうか。模擬試験を活用した受験校選定はお子さんの中学受験の成否に大きく関わります。本稿が皆様のご参考になれば幸いです。

矢野 耕平 ヤノ コウヘイ

中学受験専門塾「スタジオキャンパス」代表。東京・自由が丘と三田に校舎を構える。
国語・社会担当。著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』( ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(ともに文春新書)、『旧名門校 VS 新名門校』(SB新書)など10冊。最新刊は『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社+α新書)。現在、AERA dot. やプレジデントOnlineなどで連載記事を執筆している。

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