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2021.12.30

「中学入試」は通過点に過ぎないけれど

スタジオキャンパス 矢野 耕平

こんにちは。
 いよいよ2022年度の中学入試が始まりました。
1月は埼玉県・千葉県の私学入試、寮制を設けている地方の私学の首都圏入試がおこなわれ、2月1日以降は東京・神奈川の私学入試がスタートします。
2年前、わたしはひとりの父親として娘の中学受験に付き添いましたが、いままでの経験上「十分慣れている」と思い込んでいた中学受験の「色彩」ががらりと変わり、入試本番の間際は何だか落ち着かない日々を過ごしたことを覚えています。
前回の記事でもお伝えしましたが、2022年度の中学入試は昨年に引き続き激戦が繰り広げられると見られています。ここで読者の皆さんにお尋ねしたいことがあります。
「中学受験で無事に第1志望校の合格を射止められる」子どもたちの割合はいかほどだと思われますか?
2月1日午前に実施される入試の平均実質倍率を算出すると、男子受験生は約4人に1人、女子受験生は約3人に1人が第志望校に合格すると見られます。換言すれば、4人に3人は、3人に2人は第1志望校の合格切符を得ることができないのですね。大変に厳しい世界です。
 そう考えると、わが子の第1志望校合格が叶わない可能性も勘定に入れて、保護者は入試期を過ごす必要性があります。「もしわが子の受験が思い通りにいかなかったらどうしよう……」というそんな「怯え」を持つことは大切だとわたしは考えます。その気持ちがあるからこそ、わが子の入試の合否ひとつひとつに対して冷静に対応できるようになるからです。
わが子が第1志望校の不合格の報を突き付けられたとき、あなたはどうしますか?
 わが子の合格になかなか巡り合えず、連日残念な知らせが続いていたら、あなたはどうしますか?
受験生といえども、子どもたちはまだ11~12歳です。子どもたちは物事の善悪を判断する際に、「保護者の顔色」をその尺度にすることが多いのです。 ここまで書けば、もうお分かりでしょう。中学受験期の保護者の一挙手一投足を子どもたちはさりげなく、でも確実に注視しているのです。
「第1志望じゃなかったから、中学受験は失敗だわ」
「こんな学校、進学したって意味ないでしょ」
思わず発してしまったこんなことばは、刃物と化して子どもたちの心に突き刺さります。
「結果として第3志望校になったけれど、あなたを選んでくれたのだから、お母さんはこの学校が大好きだよ」
「悔しい思いもたくさんしたけれど、1 校合格できてよかったじゃない。本当におめでとう!」
わが子が立ち直るのに時間はかかるかもしれません。でも、こんな声掛けこそがうなだれている子どもたちが前を向くための推力になるはずです。
 中学受験の経験がわが子にとって「良いもの」になるかどうかは、保護者の態度、姿勢によって決まるところもあるのですね。
そういえば、かつてある私立中高の校長先生にこんな話を聞かせてもらったことがあります。
「ウチの学校の入試は数年前まで2月2日と4日の2回だったのですが、それに2月1日の入試回を加えたのですね。どういうことが起こったと思いますか?入学式がとても明るい雰囲気になったのです」
このエピソードでわたしが言わんとすることはもうお分かりになったでしょう。
 どんな結果であれ、4月の「入学式」に晴れやかな表情でわが子が臨めるよう、お子さんの中学入試、そして、その受験結果に対して、保護者はあたたかい気持ちで支え、受けとめてやってほしいのです。
さあ、いよいよ入試本番です。
 皆さんのお子さんが自らの手で「笑顔の春」をつかめることを心から願っています。

矢野 耕平 ヤノ コウヘイ

中学受験専門塾「スタジオキャンパス」代表。東京・自由が丘と三田に校舎を構える。国語・社会担当。著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(ともに文春新書)、『旧名門校 VS 新名門校』(SB新書)など10冊。最新刊は『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社+α新書)。現在、AERA dot.やプレジデントOnlineなどで連載記事を執筆している。

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