2021.11.30
素直な心
組織改革ファシリテーター 石橋 哲
皆様、いかがお過ごしでしょうか?この原稿は10月中旬に書いています。
書店の店頭には来年の手帳コーナーが出現し、2022年の足音が聞こえる季節。今学年を、次学年への発射台と位置付けるに好機ですね。
9月末には緊急事態宣言が解除され、コロナウィルス感染症拡大もピークアウトしたかに見える様相に、街のひと通りは急に増えています。ワクチン接種の広がりが、このままコロナ禍の収束をもたらすのか、それとも、私たちの心のゆるみと冬の到来が再び拡大をもたらすのか、先行きはなかなか見えにくいようです。
コロナ禍は社会に大きな影響を与えました。感染の世界的な急拡大は人や経済の動きに急ブレーキとなり経済的に大きな衝撃となりました。同時に、塵や埃で年中見通しの悪かった大都会の空が晴れわたったりするなど、地球環境への打撃は私たちが引き起こしているものであることが明らかになりました。これまで、限られた時空間に人と人との近接・接触密度をいかに上げるかを競う社会構造でしたが、デジタル技術の進展浸透は社会のあり方の大きな変容の可能性を示しました。世界のどこからでも協働することが可能になり、働き方を原則リモート化してオフィスを縮小・廃止する企業も出現するなどの現象も身近に起きました。学び/教育の世界でも、生徒一人一人にPCが行き渡りつつあり、大変化が起きています。一方で、DXの先端を行くマイクロソフト社の社内調査で、「サイロ化」傾向が報告されるなどのニュース(※1)もありました。
私たちは今、まさに進行している新しい社会のあり方への変容の只中にいます。向こう側はこれまで誰も見たことがない世界、大人も子どもたちも初めて経験する世界です。その道行では、目の前のことの効率的な処理に注力するのではなく、社会や世界、目の前の事態はどのような構造でできているのか、をちゃんとみようとする姿勢が大切になりそうです。
子どもたちは友達同士で教え合う中で自ら学びます。世代間での学び合うことができればその実践は子どもたちの自己肯定感を一層豊穣に育みます。私たち大人も、自ら全能感を発揮するのではなく、自分は何者なのか、自分はどんな構成でできているのか、を見極めることが大切になります。出来上がった自分という建造物を誇るのではなく、その自分を作ってきた姿勢こそが誇るべきものと強く自覚し、姿勢を堅持することが大切なのですが、実はこれが大変です。ときどき間が抜けたりします。そんなとき、大人にとって互いに一緒に船出し、新しい時代を切り拓くパートナーである子どもたちからの素直な問いは、私たちが自分を見極める際の問いとして効果絶大と思います。
今年2021年春に聞いた鎌倉円覚寺管長の横田南嶺老師がコロナ禍下で毎日YOUTUBEに管長日記をアップされています。2021年3月16日のお話は「素直な心」でした(※2)。禅の深奥にある物事への向き合い方は今の困難な局面を乗り越え、未来を切り開く鍵は私たちの日々の姿勢にあるのかもしれません。
石橋 哲 イシバシ サトシ
東大法卒。邦銀・米銀を経て、03年産業再生機構参画(マネージングディレクター)。
07年以降組織変革支援。07年日本郵政顧問、08年内閣府政策企画調査官、11年国会事故調(原発事故調査委)調査統括補佐、等歴任。19年4月から東京理科大大学院技術経営(MOT)専攻教授(https://most.tus.ac.jp/teacher/ishibashi_satoshi/)。
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