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2021.12.30

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物事を深く掘り下げながら、
不確実性の時代を生きる力を身につける

光塩女子学院の名前は、マタイの福音書の「地の塩、世の光」からつけられ、同学院の建学の精神にもなっている。「燭台の蝋燭が身を溶かしながら光を放ち、塩は自ら溶けて味をつけたり防腐剤になったりするように、人のために生きることを喜びとする」生き方を説く。それは決して自己犠牲ではなく、自らの本領を発揮し、世の中に貢献できる人となることだ。生徒たちが自分の真理を見つけていくために、同学院では探究に力を注いでいる。

物事の真理を掘り下げ、自分に何ができかを考える

探究活動は、各学年の総合的な探究の時間で行うものと、全校生徒に呼びかけてプログラムを考える特別企画がある。「特別企画は、イベントの準備から運営、宣伝も含めて生徒たちの手で行います。どうすれば興味を持ってもらえるか、イベントに来てくれるか、それを考えることも探究です」と、塚田先生。こうした活動の中で、今年の6月にはJBBY(日本国際児童図書書評協議会)の企画協力・資料提供を得て、「世界の子どもの本展」の開催が実現した。世界60カ国、51言語、200冊の本が校内の特設スペースに並び、放課後には生徒たちで大いに賑わった。「生徒たちは、教員が思っている以上にいろいろな発想を提案してくれます」と、塚田先生は生徒たちの探究活動に大きな手応えを感じているようだ。

朝の祈り「自分のまわりに喜びと光をまくことのできる女性となれるようお教えください」

生徒たちに伝えたい大切なメッセージ「SALT」

変化の激しい不確実性の時代、「光と塩」の教えを生徒たちにどう伝えていくのか。同学院の佐野摩美校長は、「蝋燭が光を放つのはイメージしやすいのですが、塩という言葉からメッセージを伝えるのは難しい。それをわかりやすくするために、「S・A・L・T(=塩)の頭文字を用いたキーワードを提示しました」。と話す。それぞれSustainability(持続可能性)、Ambition(大志)、Lux Veritatis(真理の光)、そして、Tolerance(寛容)を示している。「明確な正解がない中で、考えて、考え抜いて自分なりの答えを見つけていく。つまり真理の光を見出す力が必要になります。その力を養うものが“探究”だと考えています」と佐野校長。同学院では、生徒1人1人が探究を行う環境を整えるため、昨年度から社会科の塚田聡子先生をリーダーとする探究チームを立ち上げ、活動を始めている。

梅山さんは探究特別講座「イマドキな光塩生が考える『今ない仕事』」に参加した。「AI がどれほど発達しても、人を感動させることは人にしかできないというお話を聞いたことは大きな発見でした」

穴田さんは、アフリカ探究を経験してから家族との会話にも変化があったそうだ。「家族で世界情勢やアフリカの下水道の話をすることが増えました」

ものの見方が変わり、心のフックが増えた

現在高校1年生の穴田彩季さん、梅山昊子さんは、中学3年生の地理の授業で「アフリカ探究」を行った。アフリカの54カ国から題材とする国を1つ選び、地図やデータからその国の抱える課題、国をさらに発展させるための提言までを考えるのだ。自分たちで調べて、まとめる作業は大変ではないかと2人にたずねると、「自分でやりたいところまで調べられることに自由さを感じます」「未知のことを掘り下げていく面白さ、冒険する気持ちのほうが強かったです」と、笑顔で答えが返って来た。梅山さんは、ガーナについて調べた。チョコレートのパッケージで国の名前を知ってたからだという。「チョコレートのパッケージに、ガーナの子どもたちを支援するプログラムのラベルがあって、現地の子どもの労働環境を調べてみたいと思いました」と話す。そして、探究活動を終えてみると、「今までと見ている世界は同じなのに、ニュースなどでアフリカという言葉を聞くと、その国の情勢や経済状況はどうだろうと考えるようになりました。心の中に言葉が引っかかるフックが増えたような感じです」。一方、穴田さんが調べたのは西アフリカのブルキナファソ。「たまたま姉の友人が国名の響きが好きだと話していて、どんな国かと思っていたところにアフリカ探究の授業がありました。ブルキナファソは赤道直下の国で貧富の差が激しく、下水道の未発達で衛生環境の良くない国でした。ただ、探究前はアフリカにあまり良い印象がなかったのに、今はこうした国に日本の技術をもっと普及できたらと考えるようになりました」と、調べたことを話してくれた。2人の話を聞きながら、佐野校長は、「探究活動の中で周りの出来事を自分のこととして意識するようになったのは、大きな学びです」と目を細めた。

生徒に寄り添いながら1人1人の心を育てる

光塩での学校生活について聞くと、穴田さんから「光塩に入って本当によかったです」という答えが返ってきた。「小学校の時の先生は、私が何かを質問してもきちんと答えてくれませんでした。でも、今は先生たちがきちんと理由も説明してくれます」と、うれしそうに話す。梅山さんは、「学校生活の中で学年を越えてディスカッションをする機会がよくあります。刺激になるし、考え方の幅も広がるなと感じています」と感想を話してくれた。佐野校長は、「光塩は内面の真の個性に寛容で自由な学校」だと言う。生徒たちは日々、様々なことを探究し、思考を深めながら自己肯定感を深める日々を過ごしている。

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