2021.10.30
賢さと優しさと強さを併せもつ、
これからの時代を生き抜く女性を育てる
2021 年度入試で、私立難関大をはじめ大きく合格実績を伸ばした山脇学園中学校・高等学校。「生徒が自分の興味・関心に基づき主体的に進路を選択し、目標に向かって努力した結果」と、西川史子校長は語る。6年間の教育を通して、何が生徒の意欲や知的好奇心に火をつけるのか。山脇学園の教育の根幹を探った。
生徒の希望を最優先した
納得感のある進路指導を徹底
「コロナ禍で孤独な受験勉強を強いられたなか、みんな最後までよく頑張ってくれた」と笑顔を見せるのは、今年、就任したばかりの西川校長だ。「山脇学園では、3つのアイランド(イングリッシュアイランド・サイエンスアイランド・リベラルアーツアイランド)を設け、英語、科学、教科横断的な教養教育に特に力を入れてきました。こうした教育プログラムを通して自分がやりたいことを見つけ、『あの大学に行ってあの研究』がしたいと、偏差値や知名度ではない理由で大学・学部を主体的に選択してくれた生徒が多くいたことを、大変うれしく思っています」ここ数年、山脇学園の合格実績は右肩上がりだ。西川校長が言うように、生徒が主体的に目標を定めるようになったのは事実として、その先にある合格を掴み取るための学力をつけるのは、易しいことではない。生徒の学習への意欲を引き出し、学力を伸ばすのが、献身的な先生たち。「現場の先生たちは、生徒一人ひとりのことを本当によく見ている」と西川校長は言う。「本学では、塾や予備校に通わずとも、大学受験まで突破できるサポート体制を整えたいと考えています。放課後の補習やレベルアップ講座、長期休暇中の講習といった学習面の指導に加え、進路ガイダンスや面談の回数も多く、志望校決定まで生徒と先生が二人三脚で歩みます。受験に際しても、あくまでも目指すは第1志望校合格ですが、生徒や家庭の希望や状況に合わせて、徹底的に併願戦略を立てます。学校の合格実績向上のために、受験校を私たちから示唆することはありません。保護者とも本音でお話しし、本人の希望を最優先した納得感のある進路指導を徹底しています」きめ細やかな進路指導は、結果として大学進学後のミスマッチを減らす。生徒はもとより「山脇に通わせてよかった」と言う保護者が多いのは、こうした積み重ねによるところが大きいのだろう。
イングリッシュアイランドステイの授業
サイエンスクラスを新設し、
文理問わず科学人材を育成する
3つのアイランドで行う専門的・実践的な教育に加え、今年度からは基礎学力の向上にも注力している。学力向上の要となる学習習慣をつけるため、考査と考査の間に「プレテスト」と呼ばれる単元テストを行っているのだ。「テスト前だけ勉強するのではなく、自分で必要な勉強を組み立て、“自走する生徒”を育てたいと考え、プレテストを始めました。テストといっても基本問題が中心で、生徒に自信をつけさせるのも、目的の一つです。また、点数がよくなかった生徒には、早めにサポートができます。同様の問題を考査でも出し、定着をはかる効果も。早速成果は出ており、プレテストを経て行った1学期の期末テストは、例年よりも成績が良かったです」一方、来年度からは、新たに「サイエンスコース」を設置予定だ。サイエンスアイランドでの課題探究の取り組みや、2020年度入試から実施している「探究サイエンス入試」など、山脇学園ではSTEM系の探究学習に力を入れてきた。しかし、「中学で取り組みが途切れてしまい、高校、さらに大学へと学びをつなげている生徒はごく一部に限られていた」と西川校長は課題を口にする。「6年間を通して課題探究に取り組むサイエンス系のクラスを新設します。2022年度からは高校の学習指導要領が改訂され、高校でも探究が始まりますし、今後は大学入試でも探究型入試や高校での探究活動を評価する総合型選抜が増えるでしょう。そうした流れを鑑みたうえで、クラスでの学びがそのまま大学入試でも活きるようなカリキュラムを構想中です。さらに、これからの社会においては、理系・文系関係なくデータサイエンスなどの知識やリテラシーが求められます。今後は数年をかけて、このコースから学校全体に探究学習の要素を広げ、学校としてデータに基いて研究することができる人材を育成していきたいと考えています」
科学研究チャレンジクラス、ロボット班の活動
科学研究チャレンジクラス、西表島野生生物調査
レッテルを剥がして挑戦し、
高い志をもってほしい
今年度、校長に就任した西川校長。「改めて、山脇学園らしさとは何かを、問い直してみたい」という。「卒業生に尋ねると、例えば社会に出たときの常識的な振る舞い、相手を敬う精神や所作、気遣いや思いやりといった、人として大事なことは山脇で学んだよね…と言うんです。これはとても素敵なことです。昨年度はコロナ禍により学校に通うことが難しくなり、学校とは何かということを改めて考えさせられたこともあって、山脇学園に脈々と流れてきたものを問い直し、言語化してみたいと思ったのです。そしてそれが、山脇学園で学ぶことへの誇りにつながるのではないかと考えています」そして西川校長にはもう一つ、やりたいことがあると言う。「うちの生徒は、優しさや思いやりがあって、素直でいい子が多いんです。一方で、自分はこの辺でいいかなと妥協してしまうというか、ハングリーさに欠けるところがあって。だから、失敗してもいいから挑戦する。たとえ周囲が反対しても、自分がやってみたいと思えば行動する。そんな強さを身につけてほしいんです。私は中学1年生の道徳の授業を担当しているのですが、そこではいつも『レッテルを剥がそう!』と訴えています。自分のレッテルも、他の人のレッテルも、勉強に対するレッテルも、誰が決めたのと。とらわれずに、どんどん挑戦してほしい。内に秘めた良さを見つけ出し、磨いてほしい。そして、未来社会に活躍する高い志をもってほしいのです」「山脇学園らしさ」を問い直しつつ、これからの時代を生き抜くための女子教育に踏み出した山脇学園。今後の展開に注目が集まりそうだ。
サイエンティストの時間、プランクトンの観察
山脇学園中学校・高等学校 西川史子校長
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