2021.10.30
生徒一人一人の力を引き上げていく環境を提供し、
「自ら考え、伝え、行動する」人材を育んでいく。
1887 年(明治20 年)に、アメリカのキリスト教フレンド派の教えに基づく女子教育を目的に設立された普連土学園中学校・高等学校。校名の漢字には「この地上の普遍、有用の物事を学び、世界の土に連なる学校」であるようにという願いが込められている。物事の本質をしっかり捉え、自ら考え、行動し、互いを敬いながら目標を達成する。未来に生きる真の実力を、生徒たちは日々の学校生活の中で身につけていく。
生徒一人一人の力を磨く
課外活動「Friends Fab」
生徒の個性を大切にした教育に力を入れる同校。その特長を色濃く表している活動の一つが「Friends Fab(フレンズ・ファブ)」という教養講座だ。中学3年生から高校2年生までの希望者が参加し、放課後や休日に、3Dプリンタやマイコンボードなどを使って、電子工作やロボットプログラミングなどを行う。「現在は、約90人のメンバーが登録しています。最初は、プログラミングってなんだろう?面白そうだなという興味から応募してくる生徒がほとんどです。先輩達がロボット競技会『FLL(FIRST LEGOLeague)』に挑戦し、世界大会に出場したことを知って、憧れて入ってくる生徒もいます」と、Friends Fab の顧問を務める加藤芳幸先生は話す。 Friends Fab に参加する生徒は、理系だけでなく文系も多い。中学3年生で入って来る時は、パソコンの使い方もよくわからない生徒ばかりだそうだ。しかし、高校生の先輩から教わりながら自分でトライ&エラーを繰り返し、少しずつできるようになっていく。加藤先生は、そんな生徒たちが大きく成長できる機会が、前述のFFL だと言う。「FFL に挑戦できるのは、中学3年と高校1年の2年間だけです。中学生で挑戦してもさほど点数は伸びません。でも、自分たちと同年代の子たちが頑張っているのを見て、そこから猛烈な勢いで自主的に調べたり、行動したりするようになります」。 顧問の先生はあくまでも活動をサポートするだけ。生徒たちは自分たちで定めた目標を達成するために、自主的に考え、仲間と話し合い、行動する。その積み重ねによって、一人一人の未来に生きる力が磨かれていく。
昨年のFLL日本大会での様子
じっくりと腰を据えた実験で
得る気づきと学び
加藤先生は、自身の担当する物理の授業でもプログラミングなどを取り入れているそうだが、その一方で、じっくり取り組む実験も大切にしているという。「やり方の決まっている実験もありますが、年に2回は生徒が自由に行えるものを考えています」と加藤先生。1回で結果の出る実験ではなく、半年ほどの時間をかけて1つのテーマに取り組んでいくそうだ。最近行ったのは、摩擦係数の測定をテーマにした実験。生徒たちはいくつかのチームに分かれ、どんな種類の摩擦を調べるのか、どんな方法を使うのかを、ゼロから相談して進めた。実験の成果発表では、チームごとに様々な工夫が見られたと、加藤先生は目を細める。「昔ながらの実験は、教員がうまくいくように作っているので、生徒たちが実験すると必ず成功します。でも、生徒たちが考えて作ったものはそうはいきません。『やってみたけどダメだったね。それなら次はどうしようか』とチームで考える。こうした探究的な実験は、試行錯誤のプロセスで様々な気づきや学びを得ることができますし、うまくいくまで続けることで、最後には大きな成功体験を味わうことができます」。
昨年のFLL日本大会で3位入賞を果たしたチーム
Friends Fab 顧問の加藤芳幸教諭
時代よりも一歩先をいく
教育環境を提供する
現在、多くの学校が「探究活動」に力を入れるようになっているが、同校ではかなり前から同様の取り組みを行ってきた。例えば、英語教育では、ネイティブの専任教員が、生徒を中心にディスカッションを行うオリジナル授業を20年以上前から実施している。また、ネイティブの授業だけでなく、日本人教員による通常の英語授業についても、クラスを半分に分け、少人数制の授業を取り入れている。「中学3年間はしっかり基礎を学ぶことに当て、高校で時間をかけた探究的な授業を行う。この一連の流れを作ることができるのは、中高一貫校の強みだと思います」と広報部長の池田雄史先生。また、ここ数年の授業では、新たな取り組みも始まっていると池田先生は言う。ネイティブだけでなく日本人による英語授業でもグループワークや、一つのテーマを掘り下げるような内容を取り入れるようになり、また、タブレットの活用で、生徒同士の情報共有や教員とのやりとりなど、グループ活動のしやすい環境の充実も図られている。池田先生は、「探究的な授業が増えたことで、英語に触れる機会も増え、生徒たちは以前よりも英語を身近に感じられるようになっています。英語に限らず、学校で習った知識を吸収しただけで終わらせないことが大切です。それをどう能動的に生かしていくのか。生徒たちがこれからを生きていく上で必要となる真の力を伸ばしていきたいですね」と、話した。
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