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2022.07.15

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人との関わりの中で心を育み、
目標へと向けて勇往邁進する

九段下駅から徒歩5分圏内という立地に恵まれ、充実した設備を誇る暁星中学・高等学校。7つの金ボタンが輝く、伝統ある制服に身を包んだ生徒の姿は凛々しく、品性を重んじ、人格の完成を目指す教育方針を体現している。同校が実践するキリスト教に基づく教育を通じて、可能性を広げていく一人の生徒にインタビューした。

医師を目指すのは
社会に貢献するため

福者シャミナード神父が1817(文化14)年に設立されたカトリックの男子修道会「マリア会」。フランス・アメリカから来日した5名のマリア会宣教師が1888(明治21)年に、前身である暁星学校を創立した。設立以来、カトリック教会の理念を大切にした人格形成と英・仏2か国語を必修とする多言語・多文化教育を実践する暁星は、伝統ある宗教教育、多言語教育に加え医師を志す生徒が多いことでも知られている。「医師になりたい、というよりは社会に出て人の役に立ちたいという声をよく聞きます」と語るのは、広報担当の川奈部先生。「サッカー部にも、病院でケガを治していただいた経験から医師を目指す生徒がいます。ケガや病気を治療し、人の命を救う医療職は、社会に貢献するための手段として思いうかべやすいのでしょうね」と、言葉を続けた。暁星には、医療職のほかにもさまざまな目標を掲げる生徒がいる。他者との比較にさらされがちな現代において、勉学・部活を問わず目標に向けて自己を磨くことを奨励する暁星の文化の中で、生徒が自己の存在価値を見いだしていく。

ヴァイオリンとの出会いと、
日常の自己研鑽

暁星中学校の3年生には、ヴァイオリンで輝かしい実績を持つ生徒がいる。2021年度の日本クラシック音楽コンクール、全日本学生音楽コンクールそれぞれで2位となった松木翔太郎くんだ。勉強と演奏活動で大きな成果を挙げている松木くんに、ヴァイオリンとの出会い、学校の勉強との両立、学生生活の様子や今後の目標を聞いた。ピアノ教師をしていた母親の影響で、幼いころから音楽に親しんできた松木くん。4歳のころ、母親がヴァイオリニストと協演している姿を見て、「自分もあんなふうに楽器を弾いてみたい」と思ったのがヴァイオリンを手にしたきっかけだった。以来約10年間、ヴァイオリンの技術や表現を磨き続けている。さぞ多忙な日々を過ごしているのだろうと、松木くんの1日のスケジュールを聞いてみた。朝は登校前に時間の余裕があればヴァイオリンの練習。日中はもちろん、友人たちと暁星で楽しく学んでいる。興味のある教科は公民などの社会科で、数学は苦手。フランス語は分からない部分も多いが、面白みは感じているという。帰宅後はのんびりするのかと思いきや、そうはいかないようだ。「最低2時間のヴァイオリン練習と宿題を済ませてからベッドに入ります」と微笑む松木くんに、プロの貫録を見た。

2021年度日本クラシック音楽コンクール受賞者コンサートの模様

やりたいことも勉強も、
メリハリをつけて両方しっかり

「成績がふるわなければとにかく補習をするというように、勉強を全てに優先させる風潮が強い。これでは他者との比較でしか自分を評価できなくなってしまいます。男子生徒は何より目標に向かって努力する傾向がある。まずはやりたいことに思う存分取り組ませ、その上で将来について話をする。生徒たちにはその中から何が本質なのかを考えてもらえればと思っています」という川奈部先生の言葉を伝えたところ、松木くんは「確かに」と頷いた。松木くんの場合はコンサートへの出場が決まると、試験前でもヴァイオリンが優先になってしまう。暁星でない学校の教師は、「ヴァイオリンも大切だが、勉強も大切だ。もっと勉強をしろ」と言うかもしれない。しかし暁星の教師はひと味違う。「やりたいことが演奏なら、まずはそっちに全力投球。勉強はヴァイオリンの次にやればいい」と、生徒の個性を応援し、可能性をつぶさない。こうした暁星のスタンスは、ヴァイオリンと勉強との両立に悩む松木くんの大きな支えとなっているようだ。

2021年度全日本学生音楽コンクールの模様

暁星での経験を糧に
世界の檜舞台を目指す

2022年の松木くんは、国内で開催されるコンクールへの参加は見送り、海外のコンクールに挑戦する。目標は国内外の規模の大きなコンクールに出場し、高校を卒業するまでに海外のオーケストラと協演することだ。理想の演奏とは、と問うと、「正確さの上に情緒を乗せた演奏」との答えが返ってきた。松木くんいわく、同じ曲を演奏してもヴァイオリニストによって弾き方や表現が異なる。技術を磨き、作曲者や曲を理解し、その上で自分にしか出せない音を追求するのがヴァイオリン演奏の面白さ。その際に難しいのはバランスで、自分の音を追求するあまり作曲家の意図を無視すると、極端なアレンジになり、曲そのものが不自然になってしまうそうだ。松木くんも日々の練習はもちろん、作曲家が生まれた国やその生い立ちについて調べることで、自分だけの音をブラッシュアップしている。そんな松木くんを友人は応援しているに違いない。水を向けると、「学校ではヴァイオリンの話はしません。休憩時間には友人とおしゃべりしたり、野球をしたりしています」とのこと。「小学校では、友人よりもヴァイオリンを優先しがちでした。中学校に上がって友人との関わりが深まると、学校がさらに楽しくなりました。時にはつらいこともありますが、様々な感情を経験することで曲を理解する力が増し、音楽に深みが出てきた自分に気づいたのです」。ヴァイオリニストを目指す松木くんにとって、陰になり日向になり応援してくれる教師の存在、友人との時間、そして暁星の個を重んじる校風はどれも必要不可欠なものだと言えるだろう。松木くんが世界で活躍する日が待ち遠しい。

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