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2021.10.30

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複数の視点で物事を思考し、発信する力を伸ばす。
教科を横断する「クロスカリキュラム」を導入。

予測不可能な時代、多様な価値観の中にあり、自分はどう生きていきたいのか。そして、そのために何を身につけておくべきなのか。横浜女学院では、キリスト教精神に基づく自己肯定感、隣人を思いやる心を養いながら、ESD(継続的な発展をするための教育)にも力を注ぐ。今年度から教科横断型の「クロスカリキュラム」を導入。CLILと併行して生徒たちの学びの力をさらに伸ばしていく。

知識を結合させる
クロスカリキュラム

横浜女学院では、2018年より「国際教養クラス」と「アカデミークラス」を設置し、生徒の個性と目的意識に合わせた教育を行なっている。また、中学3年生からは英語学習に「CLIL(クリル)」を導入。英語の4技能「読む・聞く・話す・書く」に「考える力」を加えた5つの技能を磨くことで、英語で思考し、発信する力の強化を目指す。そして、今年度からは「国際教養クラス」にCLILと併行して授業にさらなる厚みを持たせる「クロスカリキュラム」を取り入れている。「クロスカリキュラム」とは、ひとことで言えば一つのテーマについて複数教科の授業を交差するように行うというものだ。校務部長の佐々木準先生は、「複数の教員が一つの教室に集まって授業を展開する教科横断型授業には各教員のスケジュールを合わせる必要があり、持続して行うのは物理的に不可能です。今回、本校で導入した『クロスカリキュラム』は、各教科が授業の内容をクロスさせて展開していきます。」と、話す。その方法はとてもシンプルで、国際教養クラスの教室前に置いたホワイトボードに各教員が授業内容を書き込み、互いに「クロス」できる部分を見つけて授業に取り入れていくものだという。

複数の視点で物事を学び、
活かす力を身につける

では、実際にはどのように授業が交差するのだろう。佐々木先生が理科と保健の授業を例に説明してくれた。「理科の『感染症』に関する授業の時、グループごとに『免疫』をテーマにした動画制作を行いました。生徒たちはワクチンや予防接種、アレルギー反応など、グループごとに内容を企画して動画作りに取り組みましたが、単に言葉を知っているだけでは作品作りはできません。白血球とは何か、ヘルパーT細胞やB細胞とは何かを自分たちで調べ、免疫や感染症に関する知識をただ知るだけでなく、使える知識にしていきました」と、佐々木先生。この理科の探究的な授業でも生徒たちの知識の深まりは期待できるが、「クロスカリキュラム」では、保健の授業でも「感染症」を取り上げていくという。佐々木先生は、「保健の授業では、『感染症』に関する取り組みや様々な感染症の話、保険サービスなどの視点から授業を行います。理科と保健の授業を無理に結びつけるのではなく、同じテーマを取り上げることで、生徒たちは一定期間に何度も『感染症』という言葉を耳にします。これによって様々な角度から『感染症』を考える機会が増え、テストが終わったら忘れてしまうような知識ではなく、真に活かせる知識として身についていくのです」と、そのシナジー効果を説明する。

「クロスカリキュラム」の中枢ともいえるホワイトボード。各教員が他の教員の授業内容を見ながら、可能な限り同じタイミングで同じテーマを取り上げるようにしていく

理科の授業で電気について学ぶ際には、社会科で学習した産業革命について触れている

発展して思考する力は
大学入試にも必ず役立つ

「クロスカリキュラム」の取り組みを通して、生徒たちの学びの姿勢にも変化が見られるようになったそうだ。「生徒たちは様々な視点で物事を見て、そこから発展して発想するようになりました。今の時代、『昨日はこうだったけれど今日は違う』というように、物事の価値がどんどん変わっていきます。一人一人が身につけた知識をもとに自分の新しい価値観に磨きをかけてほしいと思っています」と佐々木先生。そして、「この授業で培われた力は、将来の進路決定や大学入試にも十分対応できる」と、言葉を続けた。

自ら学びたくなるような
教育環境を提供していく

物事を探究し、知識を身につけ、その知識をどうやって活かすかを考える。それが横浜女学院の教育だ。その思いが生徒たちに根付いていることは、彼女たちの成長からもわかる。今年、高校2年の生徒4名が、南アフリカの貧困層の子どもたちにペンや本を贈るクラウドファンディングを立ち上げた。学校の授業の一環で南アフリカの子どもたちの置かれた状況を知り、自分たちに何かできることはないかと考えた末に、現地の教育支援を行うNGOと協力して活動を始めた。こうした生徒たちの行動について、佐々木先生は言う。「やらされている勉強ではなく、自ら学習する、学んでいこうとする。こうした姿にも当校の教育の目指すものが見えてきます。中高時代にはなかなか気づきませんが、勉強はつまらないものではなく、人としての厚みを増し、生きていく力となるものです。それを無理に押し付けるのではなく、自然に気づけるように促していくことが必要だと思っています。今回、新たに導入したクロスカリキュラムもその一助となるものだと考えています」。

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