2021.12.30
生徒たち自身でルールづくり
横浜雙葉の新たな取り組みに大注目!
「徳においては純真に義務においては堅実に」の校訓、すなわち神と人の前に素直な精神と品性を備え、自分の使命を最後まで貫く強さを持った女性教育を目指すミッション系の伝統ある女子校、横浜雙葉中学高等学校。そんな伝統ある横浜雙葉で1人1台のICT機器を導入し始めるとともにICT委員会を設立するなど、新たな取り組みが行われている。今回は導入後の変化とその取り組み、そして横浜雙葉の教育の今後に迫る。
「生徒がルールをつくる」とは
横浜雙葉では、今年度より1人1台のICT機器を導入するにあたり、生徒が新たな取り組みを行った。それが、「ICT委員会」の設立と、導入したChromebookの使用ルールの作成だ。今回は、この新たな取り組みについて、初代ICT委員会の遠藤碧さん、長田智亜葵さん(高校2年)、ICT委員会顧問を務める白兼実奈美先生にお話を伺った。ICT委員会の設立の経緯について、「学校でChromebookの導入が決定した際に、当たり前ですが使用ルールを決めなければならない。ただ、このChromebookを使うのは生徒自身なのに、教員側でルールを設定し守らせる、という形に違和感を覚えました」と白兼先生。ゆえに、タブレット端末を使う生徒たち自身でルールを作成するという流れになったという。「初代ICT委員会で決めた使用ルールを基盤にしつつ、今後も生徒たち自身で適宜ルールに変更・改善を加えていってほしい」と話す。ICT委員会は、中高の各クラスから2名ずつ選出され総勢50人の生徒で構成されている。ルールづくりの際には中学生、高校生で意見が割れたそうだ。「やっぱり深夜までタブレットを使用したいという意見もかなりありました。ただ、高3の先輩方が、タブレットの使用で夜更かしすることが果たして学生としていいことなのか、その姿を見る両親の気持ちはどうなのか、と意見してくださいました」と長田さん。その結果、ストリームの使用や課題提出は22時までとするルールができたという。ICT委員会では話し合いの結果、全員一致でルールが決定され、生徒たちへのルールの浸透も早かったそうだ。生徒自身で作成したルールだからこそ、そして学生としての姿勢、見守る家族、先生など、様々なことを配慮して作成したルールだからこそ、みんなが納得できるルールが完成したのだろう。また、新たに設立したこのICT委員会に所属する生徒は、ルールの作成や周知させる仕事はもちろんのこと、タブレット使用に関する各クラス生徒の相談役としても活躍しているという。「Chromebookはあくまでも教育機器であり、一人ひとりが学校生活をより円滑に送るために導入されたもの。それぞれが節度のある使い方を心がけ、ICT機器に振り回されないようにすることが大切だと思っています」と遠藤さん、長田さん。ICT委員会は今後も学校内でさらに活躍していくのだろう。
強い責任感で向き合うICT委員会の2人
おだやかに語る白兼先生
ICT教育の導入でも続く
横浜雙葉の教育スタンスとこれから
横浜雙葉では大学進学を見据え、小テストや補習・課題など、きめ細やかな学習指導が行われている。また、クラブ活動もさかんで、クラブ活動が必須の中学生だけでなく、高校生になっても続ける生徒が多く、勉強との両立に忙しい毎日を送っている。そのため、ICT委員会が作成したルールには、タブレットの使用を22時までにしつつも学校の休み時間などの隙間時間では使用を許可するような、細かな配慮もみられる。生徒自身で作成するからこそ、生徒たちの生活環境にあった合理的なルールになっているといえるだろう。ICT教育における今後の取り組みでは、従来の黒板をノートに板書する教育とICT活用型教育の融合を目指していくという。「以前、物理の授業で、タブレット上での描画ツールを用いた問題演習を行いました。授業後にアンケートをとったところ、タブレットで簡単に書いたり消したりできる方が解きやすかったという生徒もいれば、いつも通りノートに書いて解く方がよかったと回答する生徒もいました。このことから、生徒全員がタブレットを使用した授業を望んでいるのではないと気付きました」と白兼先生は話す。慣れているから、若いから、といってICT教育の導入や移行を丁寧に行わなければ、取り残されてしまう生徒が出てしまうという問題認識をしつつ、生徒が授業形態の変化に対応していけるようにしていきたい、と今後の教育方針についても語ってくださった。授業を大切にする横浜雙葉の伝統は、ICT教育を導入することでさらなる広がりをみせている。
ICT委員の長田さんも所属するバレー部
聖堂内に美しい声が響く聖歌隊の練習
ICT教育による変化と生徒の学び
ICT機器の導入によって授業の変化があったという。例えば現代文の授業では、執筆した論文を、タブレットを通して互いに添削しコメントしていくなど、新しい形の取り組みが生まれている。「コロナ禍において対面で話すことが好まれない中で、スムーズに意見交換できました。また、論文を添削する側も書いたり消したりできるところはタブレット導入による利点だと思います」と遠藤さん、長田さん。添削、コメントに関しては匿名の論文を添削するため「誰にコメントしているかわからないからこそ、優しい言葉遣いを心がけています」と長田さん。最近ではSNS上で相手が分からないから、匿名だからといって誹謗中傷するような問題があるなかで、学校の授業内であっても気をつけていると話してくれた。今年度の文化祭では各部活がウェブページを作成し、オンラインで開催された。生徒たちは様々な趣向を凝らして発表を行ったそうだ。横浜雙葉は伝統的な教育を大切にしつつ、新しいことも積極的に取り入れていく。そんな気風を感じたインタビューであった。
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