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2022.07.15

新しい人間力・新しい学力を培う教育で
実力と利他の精神を持つ「新しい紳士」を輩出

1891(明治24)年、海軍予備校として誕生した海城中学高等学校。その成り立ちから「厳しい校風の学校」として見られがちだが、現在の海城は全く違う。100周年を機に「新しい人間力」と「新しい学力」の育成を軸とした学校改革に着手して以来、一貫して生徒の個性を尊重し、その能力を大きく伸ばすことに注力しているのだ。海城の教育のあり方を、OBへのインタビューを通して見ていこう。

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海外大学への進学を現実の選択肢に
熱いメッセージを後輩たちへと発信

集まってくれた海城OBは、2022年9月からハーバード大学3年生となる山田健人くん、ジョージア工科大学2年生へと進む双川凛生くん、カリフォルニア工科大学へ入学する池田隼くんだ。「時代や他者に流されず、自ら考え判断し、行動する人間」という海城が掲げる新しい紳士像を満たす3人であり、2022年6月に開催された在学生向け交流会「海外大進学を考える会~海外大進学の選択肢を知ろう!!~」へ登壇した後輩思いの先輩でもある。そもそも交流会を企画したのが山田くんと双川くんだというから驚かされる。なぜ母校にそのような打診をしたのかと聞くと、異口同音に「海外大学への進学を現実的な選択肢として検討してもらいたい思いがあったから」と答えてくれた。
同会で語られた山田くん・双川くんの海外での学生生活、新生活の準備を進める池田くんの思いを、もう少し詳しく見ていこう。

2022年7月に完成した新校舎Science Center

ICT支援員が3名常駐するICT LAB

世界へ飛び出して気がついた
母校・海城の恵まれた環境

山田くんが海外への進学を決めたきっかけは、高校2年生で参加した模擬国連の国際大会で、アメリカの高校生とのディベートを「楽しい」と感じたこと。調べるうちに、学生同士はもちろん教授とディスカッションを行う機会も豊富にあると知り、ますます海外進学への関心が高まっていった。念願叶ってハーバード大学への入学が決まったものの、初年度はコロナ禍によって渡米できず、オンラインで授業を受けた。しかし、そんな事態にも漫然としないのが山田くんだ。日米関係が専門の教授にコンタクトを取り、「日本をよく知り、日本にいる私があなたの研究をお手伝いできないか」とアプローチをかけた。熱意の甲斐もあって2021 年春学期から研究助手に。以降はその教授の推薦で別の教授の研究助手を務めている。「助手の仕事と並行して授業を受け、知識と技術を身につけているというのが現地での流れです」と教えてくれた。堂々と受け答えをする山田くんだが、当初は「海城から海外の難関大学を目指すのは難しいかもしれない」といったハンデ意識を持っていたそうだ。いざハーバードでの勉強が始まると、それが全くの杞憂だったと気づかされた。「海城で僕は、アメリカの大学生と渡り合える実力を身につけていました。授業はもちろん課外活動も含めて、自分は本当に恵まれた環境にいたのだと再認識しています。海城で頑張れば、海外進学を含めさまざまな選択肢が手に入る。後輩にぜひ知ってもらいたい点ですね」。

海外大学進学を考える会にて保護者と話す山田くん

模擬国連での山田くんの写真

生徒の興味を応援し、
突きつめさせてくれる海城のスタイル

双川くんが海外大学への進学を意識したきっかけも、模擬国連にあった。自分と同じく日本代表に選ばれた学生たちと話していて、アメリカの大学を志望する生徒が多いことを知り、そこから海外進学が現実的なものとなった。そして、最先端の航空宇宙工学を学びたいという思いからジョージア工科大学への進学を決めたのだ。人との関わりから進むべき道を見出した双川くんだが、現役の頃はどのような学生生活を送っていたのだろうか。水を向けると「生徒会・物理部・文化祭実行委員会のうち、最も注力したのは文実の活動です。海城へ入りたいと思ったのも、文化祭の楽しい雰囲気が大きかった。関心を持った役割に時間をかけられたのは幸せでした」という答えが返ってきた。大学生活も充実している。授業はもちろん課外活動にも取り組み、2メートル大のラジコン機を仲間と製造。ラジコン機の性能を各大学が競う大会にも出場している。ラジコン機に不具合がでれば、どこに課題があるのかを考え、解決策をふまえて再度製造する。こうしたPDCAも海城の「新しい学力」教育の賜物だろう。「ジョージア工科大学では学生がそれぞれの興味にあわせて、さまざまな活動を行っています。個性を伸ばせる環境は、海城を思いださせてくれますね」と、双川くんは目を細めた。

模擬国連での双川くん

模擬国連にてスピーチする双川くん

教育格差という地球規模の問題
テクノロジーの力で解消を目指す

海城には、中学3年生を対象としたアメリカ研修がある。このアメリカ研修で現地の学部生や教授の話を聞いて、池田くんは海外進学を意識し始めた。「英語のコミュニケーションができるのだから、東京大学に進路をしぼる必要はない」という考えが浮かび、視界がぱっと開けたそうだ。模擬国連にも挑戦していたが、池田くんの大きな実績は数学部での研究。リーマンゼータ関数をテーマとした論文をチームで作成し、数学部顧問に見せたところ、国際的な学術論文誌に出すことに。そして、あれよあれよとブルガリアの名門数学誌『NNTDM』で掲載される栄誉を得た。余談だが、後日内容について海城に問い合わせたカナダの数学研究者は、この論文が高校生の手によるものだと知って仰天していたそうだ。取材時にこの事実を知った池田くんは、目を丸くして「光栄です」とはにかんでいた。カリフォルニア工科大学で学ぶのも論文と同様の分野かと聞くと、研究は続けるがメインで取り組みたいのはコンピューターサイエンスだと言う。世界に存在する教育格差を是正するためにコンピューターサイエンスの力を使いたいと考えている池田くん。カリフォルニア工科大学にはこのテーマを研究している教授がいる。まずはその教授のもとで研究を手伝い、スキルを身につけるところからだと語ってくれた。海城が大切にする「地球規模でものごとを考える力」が、しっかりと池田くんに根付いていると感じられた瞬間だった。

海外進学を考える会で中学生からの相談をうける池田くん

祝いの垂れ幕の前で記念撮影する池田くん(写真左)

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