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2021.08.30

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生徒主体の“公認団体”の活動を通して輝く個性

横浜市にあるカトリック系男子校の聖光学院中学校高等学校。全国屈指の進学校として知られるが、別の顔も持つ。「学校に縛られない教育を」と、同校の工藤誠一校長が約10年前から許可してきた「公認団体」の活動だ。生徒たちが活動テーマを決めて自主的に運営する団体で、現在26ある。その内実を探るべく、複数の団体の顧問を務める神保元先生と、公認団体「聖光コンサートプロジェクト」(SCP)のメンバー3名に話を聞いた。

大事なのは、生徒一人ひとりが
自分の力を発揮する場があること

神保先生は、これまでに「日本語ディベート研究会」「英語劇」「ポケモンセンターseiko」「中国語研究会」など多くの公認団体の顧問を引き受けてきた。公認団体は「メンバーと顧問がいるか、継続的な活動をする計画が立っているかを校長が総合的に判断し、許可している」といい、顧問は不可欠な存在なのだ。部活をやりながら公認団体にも所属している生徒や、校外のクラブチームで活動している生徒もいて、「塾に行かずに大学受験までカバーするという聖光のスタイルが、公認団体というプラスアルファの活動を可能にしている」と説明する。 「自らメンバーを募り、計画を立案して校長に折衝する…というプロセスが大事。こういう経験を中学生の低学年でもできるのが、聖光のいいところですね。例えば『人吉研究会』は、毎年シリコンバレーに行く研修のなかで熊本県・人吉市の高校生と交流してきたことがきっかけで始まり、『ボランティア×観光(ボラ観)』など地域おこしに取り組んできました。こうした活動を通して、生徒のなかに『世の中をより良くしていきたい』という思いが芽生えるんです。生徒たちは忙しくも大変充実した日々を送っていて、複数の活動に取り組むことで、メリハリや一つのことに打ち込む集中力も養われていきます。」 公認団体のなかには、素晴らしい実績を上げているところもある。「英語ディベート」は日本代表に選出され、「ボールぽこぽこ」は日本最高生ジャグリング大会で3位に輝いた。一方、コンピューター部(部活動)の顧問も務める神保先生は、公認団体の「e-sports同好会」に機材などの面でサポートしたいと考えているそうだ。というのも、部活動には学校の予算がつくが、公認団体には基本的には予算はつかないから。大会などに参加する費用は、生徒の自費だ。「自分がやりたい活動するためには、お金も必要。そういうことを学ぶ機会にもなる」と神保先生。「公認団体の活動も含めて、生徒一人ひとりがさまざまな場面で自分の持つ力を発揮し、楽しく学校に来てくれる。それが何より」と目を細める。

生徒主体の多様な経験が、
人間的成長につながる

続いて、公認団体「聖光コンサートプロジェクト」(SCP)の幹部で代表の呉地響くん、副代表の鈴木晴翔くん、デザイン担当の河原寿玖くんに、SCPの活動内容や勉強との両立などについて話を聞いた。いずれも高校1年生で、弦楽オーケストラ部にも所属。「聖光には、勉強だけでなく部活や団体活動、生徒会、聖光祭、聖光塾などさまざまな活動に参加するチャンスがあり、多様な経験ができている」と、聖光での生活を満喫している。 SCPでは、呉地くんと河原くんはバイオリン、鈴木くんはビオラとピアノで出演。SCPの活動については、「基本的には幹部5人で運営し、毎回演奏者を募ってコンサートを開催する。ジャンルはいわゆるクラシックで、ピアノソロからアンサンブルまでさまざまな編成で演奏する」と呉地くん。700人もの聴衆を集めた今年4月のクラシックコンサートに際しても、参加者を募ったうえオーディションを行い、音楽の先生に審査をしてもらったという。 「聖光は他の学校に比べて楽器演奏経験者が多く、しかも上手い」と呉地くん。幼いころからバイオリンを習っており、「聖光のラムネホールは県内でトップクラスの音響を誇るうえに、スタンウエイという超一流のピアノまで置いてあるので、自分もあそこで弾いてみたいと思って…」と入学の動機を振り返る。 4月のコンサートではソロも演奏。「ラムネホールで弾いているという高揚感がすごかった。一生懸命に勉強してこの学校に受かったこととは別の達成感や喜びがあった」と語る。 4月のコンサートでは、難曲をトリで演奏しピアノを担当した鈴木くん。中学入学前からピアノを弾いていた。「半年ぐらい練習した成果が本番で出せて、終わったときの達成感は大きかった」と満足そうな笑みを浮かべる。12月に行われる部活の定期演奏会に向けても、意欲的だ。 また、小学校まで音楽とは無縁で、中学に入学してからバイオリンを始めたという河原くんは、「大勢の前で音楽を演奏するのは緊張するけど、演奏が終わったときに拍手喝采に囲まれたり、舞台袖で先輩・後輩からよかったよと声をかけてもらったりすると、すごくうれしい」と笑顔で語る。「楽器をやっていることで日常の勉強に支障が出ることはほとんどないし、先生方も勉強面に関してしっかりとサポートしてくれる」と、勉強との両立も問題ないようだ。また、入学前には他の学校の文化祭にも足を運んでみたそうだが、「聖光学院は対応が丁寧で、生徒自身も楽しそうだなと感じ、ここに決めた」と振り返る。 最後に、本格的に受験勉強を始めるまでの残りの高校生活で、何をしたいのかを聞いた。「毎回コンサートを目標に曲を仕上げていくのが楽しいので、SCPの活動を継続していきたい」と呉地くん。「表舞台に立つだけじゃなく、SCPのコンサートの裏方をやったり、部活では部員をまとめていったり、別の方法でも音楽に関わっていきたい」と鈴木くん。「物事を企画して運営していくという体験はとても大事なことだと実感しているので、SCPや部活での経験を自分の今後に役立てられるようにしていきたい」と河原くん。それぞれが、目を輝かせて熱く語ってくれた。

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